古材事業に懸ける想い
- HOME
- 古材事業に懸ける想い
私が古材の事業に懸ける想いをお話しします。
2004年の秋、京都の室町三条をクルマで仕事で走らせていました。
室町と言えば織物の卸の町であり昔から長く栄えたところです。
そんな創業300年の京町家の呉服問屋の家屋が解体されていた時にその場所を通り過ぎました。
あの太くて立派な古い丸太はこの後どうなるのかな?
もしかして処分されるのであろうか?
子供の頃から木の海の様な場所で暮らしてきた私にとって衝撃的な感情が走りました。
次の日になっても昨日のシーンが気になり、
もう一度、現地に立ち寄ると何もかもなくなり綺麗になっていて、
なんとも寂しい気持ちになりました。
当時、一般木材の販売で関わりのあった京都の建築家の先生に
「小畑はん、島村さんとこ行っておいで。」とお勧めされた。
島村さんは今はもう亡くなりましたが、古材の先駆者でありお伺いすると
古材に対する考え方や古材の取り扱い方などたくさん教えていただきました。
その時に見せてもらった黒光りした古材とそれを真夏にわき目もふらず
一生懸命磨き込む古材職人さんの姿にとても感動しました。。
古材を蘇らすこと。古材に新たな息吹を吹き込むこと。
木は古い木材になっても生き続けていること。
それを活かすことが大切な考え方であること。
そんなことを30代の前半で学びました。
代々、木材業を営む家業を継承した中で、高度成長期や石油ショック、バブル経済を経て
木材のカテゴリーの中でも新しい木材の卸売りが事業の芯でした。
当時より、環境問題をはじめとする、リユースやリサイクル
また、人との繋がりや、きずな など本当に大切なことは何か?
ということを見直すことの話題が多くなってきた時でした。
住宅はどんどん建てて、20年で価値がなくなり、解体し、また建て替える。
そんなビジネスモデルからの「スクラップ&ビルド」の発想から
「ストック&イノベーション」の考え方に移行してきた時期でもありました。
今では京町家を壊さずにリノベーションして再生する動きも活発になりました。
私はまず古材を広めようとしていた愛媛の材木店の井上さんが営む古材倉庫グループに入り
2年間、全国の古材屋の仲間と共に学び挑戦を開始しました。
同じ様に古い木材会社の後継者が多く、木を使った未来を共に考え行動していました。
まずは古材の在庫を数本置き、木材新聞の記者あてにプレスリリースを出して
古材事業スタートを取り上げていただきました。業界の新聞から京都新聞、から日経新聞
お正月の特集にも掲載され各局のテレビ報道にも取材していただき
世の中の古材に対する関心の高さに驚いたくらいです。
専用ウエブサイトを立ち上げ、古材販売と古材買取の電話が鳴る中で
一本の問い合わせを受けることになりました。
「あのう・・・築200年の私も暮らしていた実家の古民家を解体することとなり
古い木材、古材を御社で使っていただけないでしょうか?私は当家の6代目で
公務員をしていますが、何故、6代続いた私の実家を私が壊さなくてはいけないのか?」
ご主人は大変辛い心中を明かしていただきました。
それは長い間空き家になっていた古民家でした。江戸時代から続いたお家は傾き出していて
近隣の方への迷惑も考え、古材を活用してということを前提にした解体をすることになりました。
その古民家には大きな地松の大梁や大黒柱、座敷には柿の地板など
今では山では採取できない様な立派な木材が含まれていました。
その家屋を解体業者さんと連携し、古材を取り出す特殊解体技術を用いて解体しました。
当社の木場に持ち帰り、洗浄、カット、碍子などの線を取り除き、
ワイヤーブラシで職人さんと一本づつ磨き上げるのです。
すると埃だらけだった古い木材が見違える程美しく生まれ変わったのです。
その後、インターネットを通じて問い合わせのあった飲食店のオーナーのところに
古材を購入していただくことになったのです。築200年の古材が新天地で
新たに活躍シーンをご覧になった瞬間、古民家の古材を譲っていただいたオーナー様は
目に涙を受けべながら喜んでいただけたのです。
また、以前に古材の買取に行った先のお家の木材は、私の祖父が製材して納材し
父が増改築の材料を準備していたことがわかりました。
そして孫の私がその古材を買取し、次へとつなぐ。
何ともエモーショナルで胸が熱くなり仏壇で祖父に報告しました。
古い木材である古材にはそれぞれのご家族の歴史と想い出が詰まっています。
それを譲ってくれる方と使ってくれる方との橋渡しが私の仕事です。
古材を使った建物が単に
デザイン的にカッコイイだけなら単なるマテリアルに過ぎません。
そうではなく、人の気持ちを汲んだ、過去と現在、そして未来をつなげるお手伝いを
単なる趣味でやるのではなく、生業として真剣に行うこと。
これが私の目指す古材事業です。
しかし、問題はたくさんあります。
それは古材の「譲り手」と「使い手」のバランスが悪く、
使うより、処分する率、つまり古材を買って欲しい方の方が
当社から古材を購入してくれる方よりはるかに多い点です。
古い木材、リクレイムドウッド、オールドウッドを活用することが
もっと身近で当たり前の社会になって欲しいと思い、この事業を続けています。
混沌とした現代、世界情勢は日を増すことに緊迫感を増してきました。
それぞれのお仕事、私なら木材や古材の活用の意味を自ら問い正し
本来人の持っている優しい気持ちに寄り添い、より良い世の中になる様に
私はこの古材事業に大いなる気概を持って行っております。
このお話し共感いただける様な方をこれからも少しでも増やす運動を事業を通じて行ってまいります。
京都 古材市場
安政6年創業
株式会社 丸 嘉
代表取締役 小畑 隆正